勝間田(かつまた)の池│佐倉市下勝田

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佐倉市下勝田の勝間田(かつまた)の池と厳島神社

概要

勝間田(かつまた)の池は、佐倉市下勝田の鎮守 天満神社から南へ400m、同地区の森を下った低地にある池で、佐倉市指定文化財の名勝に登録されています。池に浮かぶしゃもじ型の半島の先には厳島神社が鎮座しています。

池と神社の詳細は不明ですが、池の手前の看板に「古来より下勝田村の灌漑用に利用されていたと考えられる」と書かれています。池の横に湿地があり、植物の茂り方的に近年まで田んぼだったような雰囲気があります。

本池は様々な歌に詠まれており、社殿前の二基の石碑と上述の看板にそれぞれ記載があります。

伝承では、腹の赤い大蛇なる池の主がいたそうです。

探訪日記

非常に幻想的で現実離れした空間です。

本池は、「市指定文化財」に登録されているほか、佐倉市のHPや公民館発行の書籍『和田の伝承』には「名勝地」として紹介されているため、ある程度開発された賑わいのある場所を想像していたのですが、全くもってひと気のない深い森の中の池でした。

車道から、200m ほど山道を徒歩で下る必要があるのですが、下草が綺麗に刈られ、難儀することはありません。

背の高い樹々をくぐった陽光が、池の水と小島のうえの社殿を優しく照らします。深い森の奥にある、さっぱりとした美しい空間です。道中の山道や池の周囲、社殿、池の水底の落ち葉までに至るまで、かなり精力的に維持管理されていることが伺えます。

写真

厳島神社

池に浮かぶしゃもじ型の半島の先端には、厳島神社の社殿が鎮座し、それを取り囲むように二基の歌碑と大きな樹が三本生えています。

同社の小さな社殿は、ゲゲゲの鬼太郎の住む妖怪ハウスを思わせます。三本の樹々の生えっぷりとその形が魅力的で、角度を変えて観ると表情が変わりなかなか面白かったです。

池の水

くの字に伸びる池は、わりと大きいなという印象を受けました。

水深は浅めですが、落ち葉などの堆積物がないため、ずっと離れた先の水底まで視認することができます。そのため、「真っ暗な水底に何かいそう…」「河童に引きずり込まれるかも…」という怖さは皆無です。

池の中の落ち葉まで、丁寧に処理されているのかもしれません。

勝間田の池を詠んだ歌

看板

看板『佐倉市指定文化財(名勝)』抜粋

勝間田の池

昭和五十一年五月二十日 指定

この池は、古来より下勝田村の灌漑用に利用されていたと考えられるが、名勝地としても知られ、西行法師来訪の伝承がある。その時に詠んだという次の歌が伝えられており、歌碑として残る。

みずなしと聞きてふりにし勝間田の
池あらたむるさみだれのころ

また、天保八年(一八三七)三月に下勝田村の有志によって建立された歌もある。

勝間田の池の桜はさくらにて
くもとおもえる水だにもなし

この池は、佐倉市の名勝として貴重な存在である。

平成三年十月二十七日
佐倉市教育委員会
佐倉ライオンズクラブ寄贈

厳島神社社殿前の二つの歌碑

左の歌碑

*(左面)寂蓮法師
勝間田の池のこへろは空しくて
こほりもみづも名のみなりけり

(正面)西行法師
みずなしと聞きてふりにし勝間田の
池あらたむるさみだれのころ

(右面)為相卿
尋来てかつみるままに勝間田の
はなの蔭にぞ淋しかりけり

(裏面)若者中

右の歌碑

*落栗庵元杢網翁のなかれをくミかのくりをうち詠ひて
集栗庵勝股池路

勝間田の池の桜はさくらにて
くもとおもえる水だにもなし

栽桜天保七年(一八三六)丙申三月
建石天保八年(一八三七)丁西三月

順路

下勝田の台地のうえの畑の脇を進むと、「勝間田の池」の看板が現れます。この脇を入り、鬱蒼とした森の中を徒歩で200m ほど下ります。辺りは一切ひと気が無く灯りもないため、昼間の明るい時間に複数名で観に行きましょう。

詳細情報

社号勝間田の池
ご祭神
住所佐倉市下勝田888
その他■佐倉市HP 勝間田の池
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/wadakominkan/4/2498.html

■佐倉市HP 勝間田の池の主
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/wadakominkan/4/2110.html

■佐倉市HP 二股の葦
https://www.city.sakura.lg.jp/soshiki/wadakominkan/4/2505.html

参考

  • 『和田の伝承』佐倉市立和田公民館他 編 1998年
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