下立松原神社（小鷹明神）│南房総市白浜町滝口

南房総市白浜町滝口の下立松原神社（小鷹明神）

概要

下立松原神社（小鷹明神）は、神武天皇元年（紀元前660年）創建、天日鷲命（あめのひわしのみこと）、天照大神（あまてらすおおみかみ）、高皇産靈神（たかみむすびのかみ）、天太玉命（あめのふとだまのみこと）、大麻彦命（おおまひこのみこと）を祭神とする、南房総市白浜町滝口に鎮座する神社で、明治期から終戦期まで旧村社に列格していました。

『延喜式』神名帳に記載の「安房国六座　朝夷郡四座　下立松原神社」の比定社の一つです。「朝夷群」とありますが、当社が所在する滝口集落は「安房郡」に属し「朝夷群」に属した記録はないそうなので、歴史学・地理学を学ぶ方には注意が必要となります。

往古は「小鷹明神」（注鷲（ワシ）でなく鷹（タカ））や「瀧口神社」と称し、明治初期になって「下立松原神社」と称した雰囲気があります。

当社には、境内社として、『延喜式』神名帳の「安房国六座　朝夷郡二座　天神社」に比定される「天神社」（あまつかみのやしろ）、由布津主命の后「飯長姫命」（いいながひめのみこと）を祀る「后神社」があるほか、寺崎武男画伯の絵を展示する壁画殿も建てられています。

各祭神、境内社、壁画殿、神狩神事（みかりしんじ）など、房総の歴史を学ぶうえで大変重要な神社です。

参拝日記

県内トップクラスの「深い自然のなかの大きな神社」です。

入り口の井戸（大きな水溜め）から度肝を抜かれましたが、歩を進める毎に増していく緊張感、森を背にする大きな社殿はまさに「聖域」で、個人的に県内で最も好きな神社のひとつです。

天日鷲命、飯長姫命、式内社天神社、寺崎画伯の絵など、「一度の参拝でこれだけ贅沢を味わえるのか」というほど、房総の神社好きにはたまらない場所でもあります。

まったく毛色の違うデザインの狛犬も見もの。

創建・由緒

神武天皇元年（紀元前660年）創建、『延喜式』神名帳に記載の「安房国六座　朝夷郡四座　下立松原神社」の比定社の一つ、明治期から終戦期まで旧村社、天日鷲命（あめのひわしのみこと）、天照大神（あまてらすおおみかみ）、高皇産靈神（たかみむすびのかみ）、天太玉命（あめのふとだまのみこと）、大麻彦命（おおまひこのみこと）、他一四柱を祭神とする神社です。

境内社として、天神社、后神社、招魂社、稲荷社が鎮座しています。

『千葉県神社名鑑』抜粋

通称小鷹明神　旧村社

地安房郡白浜町滝ロ一、七二八番地通内房線館山駅より南八キロ

祭神

天日鷲命（あめのひわしのみこと）、天照大神（あまてらすおおみかみ）、高皇産靈神（たかみむすびのかみ）、天太玉命（あめのふとだまのみこと）、大麻彦命（おおまひこのみこと）、他一四柱

境内神社

后神社、招魂社、稲荷社

由緒沿革

創建は神武天皇元年。式内社。阿波の忌部の祖神天日鷲命の御孫由布津主命が天富命と共に当地方の開拓にあたられた時に、祖神天日鷲命をお祀りしたのが当社である。源頼朝公、里見氏の崇敬厚く徳川氏からも御朱印地を受けていた。

「アメノヒワシノカケルヤノ神」を祀る「松原のやしろ」は当社か？

洲宮神社縁起に、当社と関連がありそうな次の逸話が載っています。

由布津主命（ユフツヌシノミコト）の前に、雷光のように輝く金色の鳥が現れ、「我は『アメノヒワシノカケルヤノ神』である。我をこの地に祀るように。そうすればこの国は安泰である」と言いました。「祖神」の威光を恐れたユフツヌシノミコトは、松樹が生い茂る神山のある「松原のやしろ」を創りこれを祀りました。

上記の「アメノヒワシノカケルヤノ神」と「祖神」が、由布津主命の祖神「アメノヒワシノミコト」を意味するのであれば、由布津主命が先祖の天日鷲命を「松原の社」に祀ったという自然なストーリーへと繋がります。

「洲宮神社縁起　一巻」の関連個所の書下ろし文の抜粋

ここにアメノトミノ命ユフツヌシノ命とイイナガヒメノ命を見合してユフツヌシノ命をしてもろもろをうしはき、ねんころをつくさしめてのち、アメノトミノ命御倉にかへりて復命（かへりごと）したまふ。

またここに奇異き鳥ありて大空を期る。金色の羽、日に輝きて電光のことし。其の鳴声山川に答へて地震る。

かれ人ことごとく恐れおののきたり。かれ手に大はじ弓、天のはば矢を取り八目鳴鏑（やつめのかぶら）を持ちそえて、弦音高く打ち響かせてまうさく。神まこと神明ならば、こひねがはくば現るべし。荒振神ならば直ちに飛び去れと、これを告る。このとき神人につきて、吾はこれアメノヒワシノカケルヤノ神なりとのる。吾れ此の国に鎮座せんとほつす。かれ天上の祭式の如く齋きたてまつれば、まさにこの国やすらけくおはるという。

ここに於てユフツヌシノ命、祖神の御陵威をおそれて、請のまにまに瑞の新宮をつくりまつる。いつの魂、幸魂、奇魂とかんしずめてまつりおろがみ、松原のやしろととなへまつる。

かくいふ故は此の神山、松樹おほいに茂りおひて青々緑（あおくみどり）に大空を凌ぐゆえなり。

また此の神殿の正面の戸は高貴の大神ならびにアメノフトダマノ命の出入し給ふ。それをみて常に妻戸より出入し給ふ。

出典：『安房神社並びに安房神社周辺特定地区文化財総合調査概報』「洲宮神社縁起　一巻」の読みくだし文（『式内社の歴史地理学的研究』より抜粋）

写真図鑑

社殿

狛犬

新旧狛犬の顔が違い過ぎるのでとても面白いです。

階段下の狛犬

1794年、滝口村の若者奉納の狛犬。短頭の平面顔で、豚のような形の鼻は横方向に大きい。ネコ科とは思えない顔つきです。

拝殿前の狛犬

1870年奉納、山口金蔵重信の作。かなり大きなサイズで、端正かつ凶暴な顔つき、筆者が一番心をときめかすタイプの狛犬です。

石灯篭

二之鳥居の手前、両脇にある1849年の石灯篭。

鳥居

一之鳥居とその周辺

二之鳥居

摂社、末社

天神社（あまつかみのやしろ）

下立松原神社の社殿の右に廊下を隔てて、『延喜式』神名帳の「安房国六座　朝夷郡二座　天神社」に比定される「天神社」（あまつかみのやしろ）が鎮座しています。

后神社

由布津主命（ゆふつぬしのみこと）の后で、天富命（あめのとみのみこと）の娘でもある「飯長姫命」（いいながひめのみこと）を祀った神社です。飯長姫命を祀る神社はかなり珍しいです。下立松原神社の壁画殿に、御娘飯長姫命の絵が展示されています。

招魂社

稲荷神社

壁画殿

社殿の左に大きな壁画殿が建っており、寺崎武男（1883～1967）の房総開拓神話の絵が展示されている。

扉が閉まっているが、ガラス窓のから、忌部氏の房総開拓風景を描いた興味深い絵が展示されている。

滝口の井戸

神社の入口手前の崖から湧き出す水を溜めています。館山市立博物館HPによると、筒粥（つつがゆ）神事の際に白米を清めるのに使用、現在は生活用水として利用されているそうですが、透明度が低く、表面をたくさんの虫が泳いでいました。水は夏でもとてつもなく冷たかったです。

参拝順路

詳細情報

社号	下立松原神社
ご祭神	■南房総　歴旅　下立松原神社 https://rekitabi.enjoyboso.jp/shrines/shrines07.html ■館山市立博物館HP　滝口下立松原神社＜白浜＞ http://history.hanaumikaidou.com/archives/6304 ■館山市立博物館HP　神狩神事 http://history.hanaumikaidou.com/archives/7844 ■袖ケ浦市指定文化財小高神社本殿解体修理工事報告書 https://www.city.sodegaura.lg.jp/uploaded/attachment/3781.pdf
境内社	天神社、后神社、招魂社、稲荷社
住所	南房総市白浜町滝口1728
その他