南房総市白浜町白浜の厳島神社(野島弁財天)の概要


厳島神社(野島弁財天)は、関東平野・房総半島の最南端、南房総市白浜町の野島崎に鎮座する神社です。
創建年不詳ながら、平安期には「弁天堂」として存在が確認できる古社で、明治期から終戦期まで指定村社に列格していました。「野島辨天様」「野島弁財天」とも呼ばれているようです。
祭神
祭神として、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)が祀られています。
命は、素戔嗚命(すさのおのみこと)の御子神で、「海」を司る三姉妹「宗像三女神」の一柱です。神仏混淆時代は、同じく「水」を司る仏教神「辨才天」(弁天様)と同一視されていました。
関東平野・房総半島最南端の鎮守
野島崎は、関東平野・房総半島の最南端に位置します。そのため、当社は「関東平野・房総半島最南端の鎮守の杜」となります。
関東平野・房総半島の最南端の神社は、野島崎に鎮座する次の3社になりそうです。
- 稲荷神社
- 厳島神社(鎮守の社)
- 三峯神社
見所多し!
子授けの男性器像

社殿に向かって右に、男性器型の巨大な木製像が置かれています。予習済みでも驚愕するほど、ド迫力の逸品でした。
子授けの祈願のためか、ご夫婦で参拝される方が結構いらっしゃいました。
筆者がこれまで見て来た生殖器信仰の像の中で、二番目に大きいかと思います。
背後の灯台


市指定有形文化財の七福神


南房総市指定有形文化財に登録されている、安房の名工・武田石翁(せきおう)による七福神が鎮座しています。
波の伊八(いはち)・武田石翁(せきおう)・後藤義光の3人を合わせて「安房の三名工」と呼ぶそうです。
源頼朝来訪の逸話


1180年(治承4年)、再起を願う源頼朝が当地を訪れ、弁天堂(当社のこと)の傍らにあった岩に「野島山」の三文字を鏃(やじり)で刻み奉納したという逸話が残っています。
創建・祭神に関する参考情報
嚴嶋神社(通称 野島辨天様) 旧指定村社
祭神
市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)


南房総市の昔話 白浜の頼朝伝説
平家を倒して源氏の世にしようとした源頼朝は、伊豆の石橋山の戦いに敗れて安房の平北郡猟島(へいほくごうりょうしま)(鋸南町勝山)に逃げてきました。治承4年(1180年)8月29日のことでした。
その後、再起を願う頼朝は、味方を得るために安房の国中を勢力的に巡回したのですが、その際に白浜にも立ち寄りました。空が良く晴れていた9月6日だったといいます。
先ず長尾の滝口大明神(下立松原神社)に参詣し、「宗近(むねちか)」の太刀を奉納して戦勝を祈願すると、海岸づたいに野島崎に着きました。
野島には、弁天堂(厳島神社)が祀られていますので、傍らにあった岩に「野島山」の三文字を鏃(やじり)で刻み奉納しました。
白浜の野島は、
「あま小舟みえつ隠れつ朝あけの野嶋が崎の霧のむらむら」
と歌に詠まれて、『廻国雑記』に記載されているほどの、東国随一の景勝地ですので、頼朝は暫く美しい景色を眺めながら、従者の労をねぎらい、酒宴を開いたと言われています。
そこの場所には、「盃の池」「銚子の池」などの地名が残り、また、頼朝が、休息のため幹に腰を掛けた、「頼朝の腰掛け松」があったという話も残っています。
写真図鑑
拝殿














本殿




狛犬
拝殿前に、時代の異なり二種類の狛犬が建っています。古い方は、地衣類(潮風に強い種でしょうか)の付着がとても激しいです。












鳥居
一之鳥居


右に社名碑「厳島神社」、正面に一之鳥居。






二之鳥居


南房総市指定文化財 [有彫]「武田石翁の七福神」
武田石翁は、江戸時代、安房国平郡元名(もとな)村(現 鋸南町元名)に住んでいた石工です。彼が作った仏像、狛犬、宝塔などが房総各地に残されており、松平容保が、石翁作の「2尺に余る立派な黒石の二角龍」を所望したというエピソードがあるそうです。
社殿に向かって右手に、石翁19歳の作と言われる、大黒天、恵比寿、毘沙門天、福禄寿、寿老人、布袋の六体が置かれています。七福神のうち、弁財天のみ存在しません。当社はもともと「弁財天」だったため、残り六体を作ったということでしょうか。










摂社、末社






子授けの男根型木製像
生殖器崇拝(基本は男根崇拝)関連のモニュメントは、県内の神社でいくつか見ていますが、こちらの男根像は群を抜いて大きく形も生々しいです。詳細は不明ですが、材質の感じから、わりと近年に作られた雰囲気があります。シャコガイは女性器を意味しているのでしょうか。看板にある「男根・七不思議」は勢いのある文章です。
厳島神社拝殿には一切目もくれず、すぐさまこの男根像をお参りするご夫婦がいらっしゃいました。子授けの祈願のために遠くから来る方もいるのでしょうか。














男根・七不思議
ぶらぶらすれども落ちもせず
金があれども通用せず
竿があれども干しもせず
金があれども光なし
縫目あれどもほころびもせず
玉があれどもうてもせず
天を仰ぐこともなし
されど恋を成就し、子宝に恵まれすぐれたご利益のある祠也。
頼朝の石、石碑等










手水舎
手水石は船ような形の良い石です。




野島崎灯台からみた厳島神社
当社のすぐ奥には野島崎灯台が建っており、上から見下ろす野島崎の風景と陸側の山並みを見ることができます。






参拝順路


左に厳島神社の白い鳥居、その右隣に灯台、右に三峰神社の赤い鳥居が見える












詳細情報
社号 | 厳島神社(野島弁財天) |
ご祭神 | 市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)、弁財天 |
境内社 | 浅間神社、薬師如来、稲荷神社(稲荷大明神) |
住所 | 南房総市白浜町白浜629 |
その他 | ■南房総いいとこどり 源頼朝ゆかりの地 https://www.mboso-etoko.jp/manabu/yoritomo/ |
参考
上記のWeb サイトのほかに、下記を参考にさせていただきました。
- 『千葉県神社名鑑』千葉県神社名鑑刊行委員会 編 1987年