鴨川市和泉の男金神社(おがなじんじゃ)の概要


男金神社(おがなじんじゃ)は、創建年不詳、鴨川市和泉の「男金山(おがなやま)」という小山の頂に鎮座する神社です。
往古の勧請といわれる和泉地区の氏神で、現在の祭神は天之御中主命(あめのみなかぬしのみこと)。明治期から終戦期まで指定村社に列格していました。
「男金山(おがなやま)」を338段登る
のどかな田んぼの中にぽつんと浮かぶ、お椀のような形の良い「男金山(おがなやま)」の上に鎮座しています。


筆者は、近隣神社の宮司様より、
「300段以上あるから大変だよ!」
「雨上がりだから滑るから気を付けてね!」
とアドバイスをいただき参拝しました。
石製の階段は、一つひとつが大きさも形も揃ったみごとなもの。高さ・歩幅も成人に適したサイズをしており、段数のわりにさらっと登ることができました。
問題は降りで、雨が上がった直後であったため、石段がなかなかに滑り、手摺りにかなり助けられました。地元の方が熱心なメンテナンスをされているのか、苔むした石材などは一つもなく、大変助けられました。


山の麓には「この階段での事故等は、自己責任として下さい」との看板があります。参拝希望の方は、あくまで自己責任として、日中複数人で、石段が乾いているときの参拝をお勧めします。
本来は妙見社
当社の古来の社名は「妙見山」「妙見社」で、明治期の神社制度改定に伴い「男金神社(おがなじんじゃ)」と改めました。当社の鎮座する男金山(おがなやま)から取ったのでしょう。
往昔の名残か、現在も通称「和泉妙見社(いずみみょうけんしゃ)」との呼び名があるそうです。
製鉄・妙見との関わりは?
鎮座場所の「男金山」のほか、近隣には「女金山(めがなやま)」「金山」があり、いかにも製鉄(産鉄)と関わりのありそうな地名をしています。
これについては、日蓮宗 現代宗教研究所の石川 修道 氏が次のように書かれており、大変興味深いです(出典は後述)。
- 男金神社は忌部族が開拓した産鉄地と考えられる。
- 当地で産まれた日蓮宗の日向(にこう)上人の生家では、古代の鉄屑が出土する。
- 産鉄技術を有する忌部族の星神信仰が、仏教と合わさり、近隣の清澄に於ける明星・虚空蔵信仰、妙見信仰に発展する。
忌部氏について補足
鴨川市市街地から西に伸びる広い平地部は、いかにも忌部氏の開拓を受けていそうな場所に見えます。
しかし、安房神社や下立松原神社のような、忌部氏が入植の際に創建したと思われる古社がありません。男金神社と忌部氏を関連づける資料も、今のところ見当たりません。
合祀した小祠
『千葉県神社名鑑』に、1908年(明治四一年)、当区の次の小祠を合祀したとあります。実際参拝してみると、どれがどの社か判別はできませんでした。
- 八幡神社
- 大山祗神社
- 稲荷神社
- 神明神社
- 駒木神社
- 菅原神社
- 松原神社
- 日枝神社
- 貴船神社
創建・祭神に関する参考情報
男金神社(おがなじんじゃ)(通称 和泉妙見社(いずみみょうけんしゃ)) 旧指定村社
御祭神
天之御中主命(あめのみなかぬしのみこと)
御由緒
創立年代は不詳であるが、往古の勧請といわれ、和泉地区の氏神である。古来社名を妙見山あるいは妙見社と称していたが、明治維新のさい男金神社と改め今日に至る。明治四一年当区の各集落に鎮座する小祠を当社に合祀した。即ち八幡神社・大山祗神社・稲荷神社・神明神社・駒木神社・菅原神社・松原神社・日枝神社・貴船神社である。社殿は文久二年、当時房総の名匠といわれた半助棟梁の建築にかかるものである。
男金神社の祭神は天御中主命(仏教では北辰妙見尊)で忌部族が開拓した産鉄地と考えられる。日向上人の生家・現在の佐久間友三郎(故人)宅からは、今でも古代の鉄屑が出土する。
『宗祖生国の先住者─安房に移住した阿波忌部族の動向について』石川 修道 著(日蓮宗 現代宗教研究所)
忌部族の祖神「天太玉命」を祀ったのが安房国一の宮「安房神社」であり、忌部水軍の指令峰が清澄山であった。その頂上には天富命の廟所が祀られ、産鉄技術を有する忌部族の星神信仰が、後に仏教伝来に伴り、清澄に於ける明星・虚空蔵信仰、妙見信仰に発展するのである。そののち房総北部には、「経津主命」と「武みかづち命」の産鉄神が香取・鹿島神宮として東国へ進出する。
『宗祖の母・梅菊「畠山重忠有縁説」の一考察』石川 修道 著(日蓮宗 現代宗教研究所)
写真図鑑
拝殿


拝殿向拝の彫刻
向拝の彫刻は、三代目伊八の作と言われています。









本殿






おまけ:本殿の垣根の変える


参拝順路
東方向から男金神社を目指す道中
男金神社の鳥居は「和泉公会堂」入口のすぐ右隣にあります。地図アプリでは、男金神社よりも「和泉公会堂」を目指すと迷子にならずに参拝できます。




右の山が男金山
鳥居




里山と田園が大変美しい
鳥居から麓までの参詣路、狛犬等












男金山の麓、常夜灯、狛犬












338段の石階段、常夜灯、狛犬、小祠
















頂上の社殿、手水、小祠






基本情報
社号 | 男金神社 |
ご祭神 | 天之御中主命(あめのみなかぬしのみこと) |
境内社 | |
住所 | 鴨川市和泉1639 |
その他 |
参考
上記のWeb サイトのほかに、下記を参考にさせていただきました。
- 『千葉県神社名鑑』千葉県神社名鑑刊行委員会 編 1987年
- 『宗祖生国の先住者─安房に移住した阿波忌部族の動向について』石川 修道 著(日蓮宗 現代宗教研究所)
- 『宗祖の母・梅菊「畠山重忠有縁説」の一考察』石川 修道 著(日蓮宗 現代宗教研究所)