袖ケ浦市坂戸市場の坂戸神社の概要
坂戸神社は、110年(景行天皇四十年)または673年(白鳳二年)創建と伝わる、袖ケ浦市坂戸市場の独立丘陵 坂戸山の頂に鎮座する神社です。明治期から終戦期まで郷社に列格していました。
祭神として下記の神様が祀られています。
- 手力雄命(たぢからおのみこと)…天岩戸開きで活躍
- 天児屋根命(あめのこやねのみこと)…中臣氏の祖神
- 天太玉命(あめのふとだまのみこと)…千葉県を開拓した忌部氏の祖神
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近隣には2基の古墳、坂戸神社古墳と坂戸神社境内古墳があります。詳しくは下記をご覧ください。
創建・由緒
坂戸神社は、110年(景行天皇四十年)日本武尊による創建とも、673年(白鳳二年)十一面観世音菩薩を本地仏とする創建とも言われています。
元来は手力雄命を祭る「磐戸神社」であった、718年(養老二年)に天小屋根命と天太玉命を合祀、「坂戸神社」に改称したと伝えられています。
坂戸神社古墳は創建に無関係?
神社の傍らに4世紀代造営の坂戸神社古墳があります。
神社創建との関連を考えたくなりますが、実際足を運んでみると、古墳は坂戸山(丘陵)頂上の中央ではなく、神社参道を避けるように山の際(きわ)にひっそりとあるため、神社創建の後に造営されたように感じられました。
年表
参考資料(後述)に記載の情報を時系列に整理すると下記となります。
110年(景行天皇四十年) | 日本武尊が先勝を祈願し奉斎? |
301年~400年(4世紀代) | 坂戸神社古墳の造営 |
673年(白鳳二年) | 十一面観世音菩薩を本地仏として創建? |
712年(和銅5) | 『古事記』完成 |
718年(養老二年) | ・信濃の戸隠神社に倣って、天小屋根命と天太玉命を合祀 ・坂戸神社に改称 |
720(養老4年) | 『日本書紀』完成 |
江戸時代 | 坂戸明神と呼ばれる |
現在 | 祭神は手力雄命、天児屋根命、天太玉命 |
名称の変遷
- 往古は「磐戸神社」と称する
- 718年(養老二年)「坂戸神社」に改称( 「坂戸」は「逆手」とも)
天岩戸のかけら
Wikipedia「天岩戸」に、「千葉県袖ケ浦市坂戸市場 坂戸神社。天岩戸のかけらという伝承の岩、天磐戸の石碑がある。」とあります。
「天岩戸のかけら」は見つかりませんでしたが、「天磐戸の石碑」は見つかりました(後述)。
個人的には、岩戸開きに関与した天太玉命の子孫が、「かけら」をご神体にこの地に磐戸神社を創建、というエピソードだと面白いなと思いました。
当社は天岩戸関連の神社を中臣氏が改称か?
当社は下記の点で「天岩戸開き」との関連を匂わせます。
- 旧社名は「磐戸神社」
- 祭神は「天手力男神」
- 「戸隠神社(祭神 天手力雄命)」に倣い創建
- 近隣に「天岩戸のかけら」がある?(「天磐戸」の碑あり)
しかし、『日本書紀』完成の二年前の718年(養老二年)、社名を「坂戸神社」に変更し、中臣氏の祖神 天児屋根命を祭神に加えます。
場所は離れますが鹿島にも「坂戸神社」と称し天児屋根命を祀る社があります。『常陸国風土記』に「香島の天の大神」の一つとして記載される鹿島神宮の境外摂社「坂戸神社」(鹿嶋市大字山之上)です。中臣氏により、磐戸神社の社名と祭神に変更がなされたのでしょうか?
参考文献の抜粋
P250 坂戸神社
(前略)祭神は手力雄命・天児屋根命・天太玉命であるというが、創建については詳らかでない。伝承では(中略)人々はここに忌部氏の祖神を祀ったものという。また一説には、景行天皇四十年に日本武尊が先勝を祈願して奉幣したとも、白鳳二年に十一面観世音菩薩を本地仏とし、養老二年に信濃の戸隠神社に倣って天児屋根命と天太玉命を合祀したともいわれている。古くは磐戸神社と呼ばれていたが、養老二年(七一八)に坂戸神社に改称したという。江戸時代には一般に坂戸明神と言われていたようで、『房総志料』には「坂戸明神の森あり。或いは逆手に作る」とあり、坂戸は「逆手」とも言われたことがうかがえる。(後略)
坂戸神社 旧郷社
祭神
手力男命(たぢからおのみこと)
由緒沿革
白鳳二年の創建と伝えられ、もと逆手神社と称した。里見氏が当地に興ると、例祭には重臣を派し神幸を護衛させた。七月二九日の例祭には古来人贄を献ずる神事があった。明治六年郷社に列した。
写真図鑑
社殿
拝殿
本殿
鳥居
一之鳥居
二之鳥居
賽銭箱があり、階段を登らずにここから遥拝することも可能
石碑、等
狛犬
手水舎?
龍の彫刻の立派な土台の上に置かれた手水鉢(?)。周囲には柱の基礎だけが残っています。手水舎の跡ででしょうか?
鉢の内部やホースの様子から、現在も手水として使われている雰囲気でした。
常夜灯
一之鳥居近隣の常夜灯
1840年(天保11年)の石灯篭で、所々改修された跡が見え、火袋(光源を入れる場所)がないように見えます。
社殿前の常夜灯
1838年(天保9年)の石灯篭で、こちらも所々改修された跡が見え、火袋がないように見えます。
天岩戸の石碑
目印として、この二本の樹の間の奥に天磐戸の石碑がある
月山信仰の石碑
参拝順路
宮下の莫越山神社が思い出された
森の中だが神社周辺はかなり明るい
基本情報
社号 | 坂戸神社 |
ご祭神 | 手力雄命、天児屋根命、天太玉命 |
境内社 | |
住所 | 袖ケ浦市坂戸市場1441 |
その他 | ■袖ヶ浦市HP 有形文化財 坂戸神社古式祭典図巻 https://www.city.sodegaura.lg.jp/uploaded/attachment/30386.pdf ■袖ヶ浦市HP 広報そでがうら+ vol40 坂戸神社 https://www.city.sodegaura.lg.jp/soshiki/hisho/koho-sodegaura-plus-vol40.html ■芝山町立芝山古墳・はにわ博物館 房総の古墳を歩く/袖ヶ浦市の古墳 https://www.haniwakan.com/kenkyu/boso/sodegaura.html |
参考
上記のWeb サイトのほかに、下記を参考にさせていただきました。
- 『千葉県神社名鑑』千葉県神社名鑑刊行委員会 編 1987年
- 『日本の神々 神社と聖地 11 関東』谷川 健一 編 1984年