諏訪神社(木之子神社)│佐倉市木野子

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佐倉市木野子(きのこ)の諏訪神社(木之子神社)の概要

佐倉市木野子(きのこ)の諏訪神社は、異なる二つの神社の境内が合体したような珍しい配置を取る神社です。左に金比羅神社、右に諏訪神社が鎮座しています。

境内目の前のバス停名称は「木之子神社」ですが、千葉県宗教法人一覧には「諏訪神社」と登録されています。

創建・由緒は不明、明治期から終戦期まで村社に列格していました。

祭神は次の二柱です。

  • 建御名方神(たけみなかたのかみ)
  • 八坂刀売命(やさかとめのかみ)

出雲の親子三柱が横に並ぶ

当社境内は、金比羅神社(左)と諏訪神社(右)それぞれの「鳥居-手水-狛犬-社殿」のセットが横に並ぶ配置となっています。狛犬は一体ずつで、二体は向かい合っています。

祭神は次のようになり、

  • 諏訪神社(右):建御名方神(大己貴命の二男)、八坂刀売命(大己貴命の后神)
  • 金比羅神社(左):大己貴命(おおなむちのみこと)(=大国主命)

出雲神話の親子神三柱が、隣同士仲良く鎮座しています。

木野子、木之子、キノコ

神社名

当社目の前のバス停には「木之子神社」と書かれているが、県には「諏訪神社」で登録されています。

地元では「木之子神社」と呼ばれているのでしょうか?

地名

戦国時代初頭の1493年付で、「キノ子彦次郎」なる人物の記録があるそうです(参考:千葉菌類談話会 きのこ神社のこと(吹春 俊光))。

1590年に没落した千葉氏関連の家々がこの地に帰農したことが、当村の草分けである推察されています(『根郷風土記』)。

藩政時代は「木野子村」と呼ばれていました。

境内社も面白い

当社にはたくさんの境内社が鎮座していますが、特に、

  • 養蚕の神様を祀る蚕影神社(こかげじんじゃ)のド派手な黄色い社殿
  • 熊野神社のキノコのような男根型石製像

が目を惹きます。

当社北西2.3kmほど、太田地区の熊野神社にも、男根型石製棒・木製棒が大量に祀られていますから、何か関係があるのでしょう。

関連コンテンツ

太田地区の熊野権現様および千葉県の生殖器崇拝については下記をご覧ください。

大鷲神社(鷲宮)、妙見神社(妙見宮)を合祀?

『根郷風土記』P109と『昔日佐倉拾遺録上巻』P196に、木野子の次の二社を大正初期に諏訪神社に合祀したとあります。

  • 大鷲神社:祭神は天日鷲命
  • 妙見神社:祭神は天御中主命

当社境内に「大鷲」「妙見」の小祠や社殿が見当たりません。諏訪神社の社殿に合祀されているのかもしれません。

関連コンテンツ

天日鷲命を祭神とする忌部の神社については下記をご覧ください。

創建・由緒

『根郷風土記』抜粋

木野子区

神社

諏訪神社(村社)

小字諏訪にあり、祭神は建御名方富命、八坂刀売命の二柱。本社は長野県諏訪にあり昔は武事の守護神として武将の崇敬が厚かった。勧請その他はつまびらかではない。明治ニ十八年(一八九五)一月一日遷宮。
(中略)
境内社として次の二社を置く。
金比羅神社(大己貴命)
天神社(菅原道真)(中略)
右の境内社のほか現在は次の図のように三峰神社・御嶽神社・疱瘡神社・蚕影神社・五穀神社がまつられている。
「諏訪神社境内図」(※筆者柱:現在と配置は同じだが、熊野神社が見られない)

大鷲神社(廃社)

もと字諏訪向の宝鏡院の右側、通称おわす様の山と呼ぶ所にあったが、大正の初期に諏訪神社に合祀された。祭神は天日鷲命。

妙見神社(廃社)

もと字屋敷二四〇番地先きの裏山にあったが大正の初期に諏訪神社に合祀された。祭神は天御中主命。(後略)

『千葉県印旛郡誌』抜粋

第十 根郷村誌

(六)村社諏訪神社

木野子村字訪向にあり建御名方命を祀る由緒不詳(中略)境内二社あり即

一、金比羅神社
大己貴命を祭る由緒不詳建物間口四尺奥行五尺

二、天神社
菅原道真公を祭る由緒不詳建物間口三尺奥行四尺

間口二間奥行五間の遥拝所あれと由緒詳ならず[神社明細帳]

『千葉県神社名鑑』抜粋

諏訪神社(通称 諏訪さま)

祭神
建御名方神(たけみなかたのかみ)

境内神社
金比羅神社・天神社

写真図鑑

境内

諏訪神社

境内右側の社で、祭神は建御名方神(たけみなかたのかみ)です。

諏訪神社 – 参詣路

諏訪神社 – 社殿

金比羅神社

境内左側の社で、祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)です。

金比羅神社 – 参詣路

金比羅神社 – 社殿

境内社、道祖神

道祖神

庚申社

五穀神社

三峰神社

諏訪神社の右奥、神社から見て左後ろに鎮座しています。

熊野神社

1981年(昭和五十六年)発行の『根郷風土記』の「諏訪神社境内図」に、熊野神社のみ存在が見られません。近年、置かれたのでしょうか。

御嶽神社

天神社

祭神は菅原道真公です。

疱瘡神社

蚕影神社(蠶影神社、こかげじんじゃ)

真っ黄色の社殿に朱い九曜紋が目を惹きます。蚕影神社(こかげじんじゃ)という社名も珍しいです。覆屋扁額に「蠶影神社」とありますが、「蠶」は「蚕」の旧字です。

養蚕の神を祀る、茨城県つくば市神郡の「蚕影神社」を勧請した社でしょうか。同社は次の神様を祀っています。

  • 稚産霊神(わかみむすびのかみ)
  • 埴山姫命(はにやまひめのみこと)
  • 木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)

稚産霊神は、各地の麻賀多神社でも祀られていますね。

佐倉市の蚕糸(さんし)業は、明治以降活発になったようで、県立中央博物館HPに次の記述があります。

『日本博覧図』「佐倉蚕業会社之図」

千葉県の養蚕業は、2代目知事船越衛の桑苗貸付制度もあり、明治20年ごろから活発になった。印旛郡では、佐倉旧藩主堀田氏が奨励した。蚕業会社は24年、地元の医者、商人など有力者による出資で組織。

https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/hakuranzu/shohen/1025.html

当境内社は、地元の千葉氏系の方が、お蚕様に感謝するために近世に勧請された社でしょうか。

境内樹木

参拝順路

基本情報

社号諏訪神社
ご祭神建御名方神(たけみなかたのかみ)
境内社
住所佐倉市木野子160
その他■千葉県立中央博物館 『日本博覧図』佐倉蚕業会社之図
https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/hakuranzu/shohen/1025.html

■千葉菌類談話会 きのこ神社のこと(吹春俊光)
http://chibakin.la.coocan.jp/kaihou18/18p31.pdf

参考

上記のWeb サイトのほかに、下記を参考にさせていただきました。

  • 『千葉県神社名鑑』千葉県神社名鑑刊行委員会 編 1987年
  • 『千葉県印旛郡誌』印旛郡 編 1913年
  • 『根郷風土記』根郷公民館郷土史講座 編 1981年
  • 『昔日佐倉拾遺録』内田 理彦 著 2016年
  • 『佐倉市史 民族編』佐倉市史編さん委員会、佐倉市 編 1987年
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